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「仮面夫婦」対「離婚」の利害得失

離婚でスッキリ決着つけるか、このまま仮面夫婦を続けるかで悩む熟年はとても多いと思います。要は、一人一人の生き方・考え方に従って決めるべきものだと思います。

ここでは、厚生年金及び財産承継に係わる年金制度、財産分与・相続制度の側面から「離婚」対「仮面夫婦」の経済面からの利害得失を解説します。

夫が妻より先に亡くなることを前提とする限り、厚生年金及び財産承継のいずれでも、仮面夫婦を続ける方が経済的に有利です。年金では、年金分割の1/2対遺族年金の3/4、財産承継では、夫婦共有財産の1/2対夫の特有財産も含む1/2です。

夫が妻より先に亡くなったとしても、夫の生存中は、年金支給額の大半は夫名義の口座に支払われるので、妻が自由に処分できないことをどう考えるか、相続の場合も夫の遺言書で妻を相続から外した場合は、制度的には、夫の総財産の1/4の遺留分だけとなって、共有財産の1/2より遙かに下廻る可能性があります。

「年金分割」対「遺族年金」

離婚時の年金分割の按分割合は、1/2が基本です。それ以下を夫が主張しても、簡単に手続できる年金分割審判(裁判の一類型)で、容易に1/2の按分割合の審判を得て、夫の協力や関与なしに、妻単独で1/2の按分割合での年金分割が可能です。

夫死亡後は、配偶者は、婚姻が破綻しているか否か、又は、別居しているか同居しているかに拘わらず、遺族年金が受給できます。遺族年金の額は、夫が生前に受け取っていた額の3/4(75%)と厚生年金保険法で法定されているので、年金分割の1/2より有利です。

夫の生前中は、夫名義の年金は、厳密に、夫名義の預貯金口座に振り込まれますので、妻には、法的に夫名義の年金の処分権は全くありません。仮に、妻が振込口座のキャッシュカードをもっていても、夫が紛失届を出せば、直ちに妻のもつキャッシュカードを無効にして、年金を夫の完全な管理下におけます。仮面夫婦を続ける場合、妻は、少なくとも、夫が死亡するまでは、経済的自立が計れず夫の従属下におかれることになります。

尚、65才以降は、妻名義で基礎年金と配偶者加給年金又は振替加算が支給されますが、夫の支給額に比べて微々たるものです。しかも、夫が先に亡くなる保証はありません。この場合は、妻は一生涯、夫の支配下におかれることになります。

一方、離婚して年金分割(別居だけで年金分割することは不可能)すれば、年金機構は、元妻の名義での標準報酬額を認識するので、元妻名義の預貯金口座に年金機構から支給額が振り込まれます。遺族年金より少ない額ですが、早い時期から、一定程度の妻の経済的独立は可能です。

別居又は同居状態で、仮面夫婦状態を続け、より多額の遺族年金をもらうことは、法的には全く問題がありませんが、経済的自立の時期が遅くなるリスクがあります。このリスクをどう考えるかは、各人の生活哲学の問題で、ご本人が意思決定するしかありません。

「財産分与」対「相続」

離婚時の財産分与比率も、夫死亡時の法定相続分も、どちらも同じ1/2です。(相続は子がいる前提)しかし、対象が、財産分与は夫婦共有財産だけなのに対して、相続は夫の特有財産(婚姻前や相続でに取得した財産)も含まれる総財産です。それぞれの事情によりますが、通常は、相続の1/2の財産の方が多額となるでしょう。(圧倒的な多額となるケースもあるでしょう。)尚、仮面夫婦状態で、婚姻が完全に破綻している場合でも、法的な妻である限り、法定相続分はそうでない場合と全く同じです。

又、妻と子どもが法定相続人の場合は、遺産分割協議により、妻が1/2より大きい比率で相続することは可能です。しかし、相続になると、人格が変る場合もあるのが世の常で、母子間で相続争いに発展する可能性も否定できません。(子がいない場合は、妻が2/3、夫の両親が1/3の相続分になり、夫の両親が死亡している場合は、妻が3/4、夫の兄弟姉妹が1/4となります。)

一方、夫婦仲が悪い場合は、夫が遺言書を用意して、妻を相続から外してしまうことが可能です。この場合は、遺留分を請求できます。遺留分は、子がいる場合は1/4等、法定相続分の1/2です。しかし、遺留分は、夫の死亡後1年以内に他の相続人に請求する必要があります。話合いがまとまらない場合は、裁判所に遺留分減殺訴訟を提起するしかありません。尚、遺言書があっても、全ての法定相続人が合意さえすれば、遺言書と異なる相続(例えば法定相続分による相続)することは可能です。

相続時の骨肉の争いも覚悟して仮面夫婦を続けて、より多額の相続を実現するか、離婚して共有財産の1/2を確保するかは、年金と同様に、各人の生活哲学の問題で、ご本人が意思決定するしかありません。

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