第1号改定者と第2号改定者が、合意分割が必要な場合で、年金分割の分割割合(按分比率)で合意できない場合は、早期に年金分割の審判(正式には、「請求すべき按分割合審判」)を管轄の家庭裁判所に申立てるべきです。
特に、除斥期間の2年に近接している場合は、直ちに話合いを打ち切り、できるだけ早期に強制解決手段である年金分割の審判を申立てるべきです。審判は裁判の一類型です。
審判申立日が離婚後2年以内である限りは、審判確定日が離婚後2年を経過していた場合でも、審判確定後6ヶ月以内に年金事務所で手続すれば、年金分割ができます。(従来は1ヶ月以内でしたが、6ヶ月以内に改訂されました。)
それ程の時間がかかることなく、まず間違いなく、「按分割合として50%とする」との審判が下ります。裁判であっても、年金分割審判は、一定程度の法律知識や訴訟手続知識さえあれば、弁護士に依頼する必要もなく、安価なコストでできる裁判手続です。担当裁判官の裁量なので確約できませんが、殆どの場合は、審判に出席する必要もなく、郵送で審判書謄本及び確定証明が送付される場合が多いようです。
但し、審判確定後に、できるだけ早く年金事務所に出向き、第2号改訂者単独で、標準報酬改定請求書を提出して年金分割手続を完了することが必須です。離婚調停や年金分割審判後に安心してしまって、離婚後2年を経過してしまったという悲劇が相当数起きています。本当に気をつけて下さい!
更に、第1号改訂者の死亡後1ヶ月以内でないと年金事務所で年金分割手続は行えなくなります。事故は誰にも起こりえます。審判書取得後、一刻も早く、年金事務所での手続をすべきです。
尚、離婚調停での調停調書の条項に一つとして年金分割を合意する場合も多く、その際は、離婚条項と年金分割条項のみ記された省略調書謄本を書記官が黙って準備すると思います。離婚調停の省略調書謄本の効果は、審判書と全く同一です。第2号改定者単独で、年金事務所で標準報酬改定請求書の提出ができます。
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管轄裁判所
申立人又は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法233条)なので、当然申立人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てるべきです。申立人にとってどちらが便利かにより決めて下さい。
申立人の住所地が港区で、相手方の住所地が国分寺市であった場合、通常は、申立人の住所地を管轄する霞が関にある東京家庭裁判所(本庁)に申立てます。(相手方の住所地を管轄する裁判所は、東京家庭裁判所立川支部です。)
調停ではなく審判を!
「請求すべき按分割合」事件の申立書は、「調停」「審判」の二つの類型の申立書を兼ねています。時間節約のため、必ず、審判にチェックして下さい。調停を考えるべきではありません。尚、調停離婚された方は、離婚調停の調停調書の条項の一部として年金分割が記載されています。この調停調書の効力は、年金分割の審判書と全く同一です。
提出資料
- 「請求すべき按分割合審判」申立書3通(書式はネットでダウンロードできます。)
厳密に離婚後2年以内に申立てなければ受理されません。1通は相手方に送付されます。
2頁目に、「審判確定証明申請書」がありますが、申立時に署名(記名)捺印して請求しておいて下さい。審判は裁判なので、相手方は、高裁に対して、即時抗告という異議申立てができます。裁判所から、相手方に審判書が特別送達された後2週間内に即時抗告されない場合に審判が確定します。この確定証明がないと年金事務所での手続はできません。(尚、即時抗告されても、必ず、却下されるので、心配は無用です。) - 情報通知書
離婚後にとった情報通知書であれば、全く問題ありません。申立日から3ヶ月以内に取得した通知書といった類いの制約はありません。
・年金分割・情報通知書を早く確実に入手する方法ー請求書記入要領も - 付随資料(東京家裁本庁の場合)(書式はネットでダウンロードできます。)
・連絡先等の届出書1通
・進行に関する照会回答書1通(調停になった場合に、相手方と話合いできるか否かの照会書です。裁判官には、法律上、審判より調停を先行させる裁量権があります。しかし、年金分割で付調停はあり得ませんので、形式的に書く書面です。)
費用
- 審判申立費用 1,200円
- 審判確定証明書申請費用 250円
- 切手 3,200円分の現物(東京家裁の場合、切手の種類と枚数も指定あり)
弁護士を代理人として委託することは全く不要なので、弁護士費用はゼロ
審判書の形式
必ず情報通知書が添付され、審判書の一部となっています。
審判確定後の年金事務所での手続
審判書及び審判確定証明書受領後直ちに、年金事務所で、申立人単独で、標準報酬改定請求書を含む以下の資料を提出して、初めて、年金分割が実施されます。
①審判書、②審判確定証明書、③本人確認書類(免許証等)、④婚姻期間等を証明する資料(戸籍謄本)、⑤当時者の生存を証する資料(戸籍謄本、戸籍抄本、住民票の写し等)、⑥年金手帳、⑦標準報酬改定請求書、⑧認め印(念の為)を年金事務所に持参して下さい。(⑦は年金事務所で当日記入することでも可。)