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未成年者に対して親がもつ身分上、財産上の権利・義務の総称が親権です。離婚後は、婚姻中の父母による共同親権制度から父母のいずれかが単独で行使する単独親権制度に移行するので、離婚時には子どもの親権者指定が必須です。欧米では、離婚後も共同親権とするのが主流です。
離婚時の親権者指定後以降の親権者変更は、父母間の協議ではできません。必ず家庭裁判所の許可をとる必要があります。子どもの日常の世話をする「監護・養育権」を親権から分離するいわゆる「親権と監護権の分属」は、理論的には可能ですが、親権者以外には15才未満の子の養子縁組時の代諾権はありません。再婚して再婚相手と子の養子縁組を考慮する時に問題となります。慎重に考えるべきでしょう。
面会交流は、親権の裏返しと言われています。親権をもたずに子を監護・養育しない親が子と面会して、子の健全な発達を促すことを内容とするからです。面会交流は、養育費と直接の関係はありませんが、面会交流の実施と養育費の履行確保は、統計的にも相関があるようです。元配偶者と顔を合わせずに面会交流ができるように、各種の機関によって面会交流の支援・援助が実施されています。
1.親権と監護権
1.1親権者の指定
どちらの親が子どもの「監護・養育」権を含む親権をもつかの取り決めです。 (民法819条1項)学校などでは、殆どの事に、親権者の了承をとります。 離婚届に親権者を記載して届け出た後に、親権者を変更する手続は、次項1.2をお読み下さい。
1.2親権者の変更―届出?
離婚時の親権者指定以降の親権者の変更は、父母の協議だけで変更できず、必ず、家庭裁判所の許可が必要です。(民法819条6項)家庭裁判所は、親権者変更が子どもの利益に適うと判断した時にだけ認めます。
但し、父母が、予め話し合いで合意ができていれば、殆どの場合は、1回の調停で終わり、親権者の変更ができます。しかし、必ず、父母双方が親権者変更の理由、子どもの受け止め方等を調停委員から聞かれます。
双方に争いがあって、調停で合意できない時は、審判という裁判に移行して決着しますが、最も難しい事件類型の一つです。親権者指定の時は、秤は父母のどちらにも傾いていませんが、親権者変更には、一方に既に傾いてしまった秤を逆転させるような強い理由、例えば児童虐待・育児放棄・養育能力などの理由が必要と言われています。 親権者変更を求める側に、子供の利益・福祉のために親権者変更が必要な旨の立証義務があり、簡単なことではありません。
深く考えないで、子どもの姓を理由に父親を親権者にして、母親が実際に養育している例も時々見られる。 子どもの姓については色々な選択肢があり。安易に決めないことが肝心です。 ( 父を親権者としないと、子が父の姓を名乗ることができず、父の戸籍にも置けないという誤解も多く、こちらを参照して下さい。
1.3親権と監護権の分属
親権は、子の監護養育権、居所指定権や財産管理権、法定代理権などがその内容です。監護権とは、親権者の権限中、監護養育権だけを指します。(民法766条1項)親権と監護権を父母の間で分離する事を、「親権と監護権の分属」と言います。「親権と監護権の分属」は、法律関係が複雑になり過ぎるので、「その必然性がない限り、極力避けるべき」との考え方を 家庭裁判所はとっています。調停委員としての経験から、意識せずに、実質的な分属状態で生活している離婚家族も少なからずいるように思います。
父母の話し合い次第だと思いますが、 離婚後も連絡を取り、話合いできることが必須条件でしょう。戸籍係への届出は親権者だけで、分属の公的届出は一切ありません。離婚協議書には、後々のために、分属を明記すべきです。
未成年の子供の養子縁組の代理権(代諾権)は、親権者しかもたない事に留意して下さい。母が親権をもたないと、仮に再婚して新しい夫と子どもを養子縁組させたい場合、子どもが15才未満の場合は、元夫から親権を取り戻さないと養子縁組できません。 父母間の事前の合意がないと親権者変更はとても難しいので、安易な親権と監護権の分属は避けるべきです。学校では、親権者の署名捺印が必要な場合も多く、事前に担任教師などとよく相談して下さい。迷う場合は、子どもを実際に監護養育する親が、必ず、子どもの親権もとるべきでしょう。
2.面会交流
2.1面会交流とは?
面会交流は、親権者でない親(非監護親)が子供と定期的に会うことです。
子供は、父と母双方との 接触を通じて人間的に成長します。 親権は、養育する親(監護親)の権利ですが、 面会交流は、親権の裏側にある「子供の権利」や「監護親の義務」であると言われます。別居中の面会交流の問題はこちらをご覧下さい。
2.2面会交流と養育費
面会交流の目的は、非監護親との定期的な精神的交流を通じて、子供の健全な精神的発達を促して、離婚が子どもに与えるトラウマや悪影響をできるだけ少なくすることです。
面会交流と養育費は、法的に関連性はありませんし、又、面会を養育費支払いの条件にもできません。従い、子供に会えないからから養育費を支払わないとすることは、独立した別々の権利と義務を結びつけることで、法的には不可能です。(気持ちだけは、よく理解できるのですが—)名古屋市が行った調査では、 養育費を受け取っている母子家庭の7割弱で面会交流が継続していたとの報告があります。 子供の笑顔と定期的に接する父親が、子どもの生活費に当たる養育費を、きちんと支払い、子供を護るという気持ちが強くなるのは当然ではないでしょうか。
2.3面会交流で元夫の顔を見るのは絶対ノー
有料ですが、面会交流支援の第三者機関があります。面会交流の付添や子の引渡しなどの支援サービスをしていて、 元妻と元夫が直接のコンタクトをせずに、面会交流ができるよう手助けしています。
「面会交流支援機関」をキーワードにしてネット検索して下さい。「家庭問題情報センター(FPIC)」や「NPOまめの木」などが出てきます。家裁の調査官や調停委員等から構成されるFPICが老舗です。費用は、監護親と非監護親が折半するのが原則です。
2.4面会交流の調停
離婚後、子供と会えない場合や、面会の条件など障害やトラブルがある場合には、家庭裁判所に調停を申し立てることが可能です。子の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。
強制執行できないという面会交流がもつ問題の性質から、裁判所の調停委員会は、話合いによる解決を粘り強く求めます。状況によっては、各家庭裁判所に設置されている児童室で、家裁調査官の指揮の下で、トライアルで面会(試行面会・試行面接)を行う場合もあります。親権者など子供を現在監護・養育している親(監護親)は、試行面会の状況をモニター画面等で確認ができます。
最近は、面会交流の調停が審判に移行し、面会交流を命ずる審判がかなり出ているとも聞きますが、実態はよく解りません。