離婚と財産分与、離婚と家問題でお困りではありませんか
元調停委員・行政書士夫婦が離婚問題の解決をお手伝いします。

財産分与―離婚後の生活保障

離婚時の財産分与は、双方の経済的な自立の出発点です。特に、新規の就労に困難さを伴う中高年・熟年世代にとって、死活問題です。

財産分与は夫婦共有財産を原則2分の1の寄与率で精算する手続で、贈与税は課せられません。離婚後に有効となる手続ですが、離婚後2年以内に要求しないと失効します。通常は、離婚直前に離婚給付等契約などを締結して内容を確認し離婚届提出直後に精算を実行します。

別居中は、婚姻費用は請求できますが、財産分与は実行できません。別居中に、離婚時の財産分与の合意をするのは実務でよく見られますが、財産分与の実行が離婚後です。又、別居中は、夫婦の協力関係がなくなるので共有財産は形成されないと考え、別居時点の共有財産で財産分与額を決めるというのが判例・通説で、訴訟や財産分与審判で適用されます。もちろん、法廷外で行われる協議離婚では、双方の合意さえあれば、離婚時点の基準時点とするのは何ら問題ありません。

夫婦の財産は、特有財産、共有財産、実質的共有財産に分かれ、共有財産と実質的共有財産が財産分与の対象です。職業収入等から形成された財産が共有財産で、相続財産や婚姻前の預貯金等が特有財産です。婚姻中に夫婦の協力により取得されたが、名義は夫婦の一方になっているものです。その判別・判定には、財産上の名義は全く無関係です。専業主婦の場合も、当然に共有財産に対して1/2の持分をもっています。特有財産を主張する者は、その事実の立証責任があり、どちらか不明な財産は民法上特有財産と見做されます。特有財産を分与対象とすることは、両者の合意さえあれば何ら問題ありません。

共有財産と特有財産が混じり合っている場合の裁判規範上の取扱は、動産の場合はすべて共有財産とされ不動産の場合は共有財産と特有財産に切り分けられます。

具体的な財産分与額の計算方法を例題で解説します。夫婦の共有財産から住宅ローン等の債務を控除した純資産が財産分与対象になります。純資産がマイナスになるオーバーローンの場合は、財産分与額はゼロとして、「マイナスの財産分与」はしないのが通常です。

家・住居の財産分与の評価額は、時価から離婚時の住宅ローン残額を控除した純資産額です。特別な事情がなければ、夫婦間で純資産額を1/2づつ分割します。ただし、頭金が親から贈与されたなど特有財産が共有財産が共存する場合は、分与比率は1/2ずつにはなりません。別居した場合も、別居時のローン残高で計算されるために1/2づつとはなりません。

生命保険は解約返戻金相当額、有価証券等は残高証明書の株数等残高に対する離婚時の時価が財産分与対象額とされます。有価証券の譲渡損失は無関係です。退職金も分与対象になります。

家庭裁判所での財産分与調停は、合意できない場合は、審判に移行して強制的解決が計られます。

1.財産分与とは?

離婚時の財産分与は、夫婦が同居中に形成された共有財産を夫婦の寄与率で分割して精算する手続です。分割比率である夫婦の寄与率・割合は、現在では2分の1が原則です。

1.1財産分与とは?

結婚以降に夫婦間の協力で形成された財産である共有財産を双方の寄与割合・寄与度で、離婚時に精算して分割する手続で、「精算的財産分与」と呼ばれます。これ以外に「慰謝料的財産分与」と「扶養的財産分与」がありますが、離婚時の財産分与として問題になるのは殆ど「精算的財産分与」で、共有財産と特有財産を見分ける必要があります。

1.2財産分与の寄与割合・寄与度(分割比率)

寄与割合・寄与度は、現在では、2分の1が大原則です。
戦後でも、専業主婦の寄与割合が3分の1や4分の1とされていた時代があります。2分の1以外を主張するには、主張する側に、立証責任があります。現実には、立証は難しい場合が殆どかと思います。

一般的に、作家やプロスポーツ選手・投資家など、特異な個人的才能によって蓄財した場合は、2分の1以外が離婚訴訟・財産分与審判の裁判上で認められることがあると言われています。 もちろん、主張する側に立証責任があります。

1.3共有物分割

離婚時の財産分与は、一種の共有物分割(民256条)ですが、婚姻中の分割は認められませんし、夫婦の一方名義の財産は、潜在的共有財産であるとするのが通説です。(物権上の共有であり、婚姻中に名義の変更など共有物分割が認められるという考え方もありますが、少数説です。)

1.4別居と財産分与

離婚して初めて発生する権利(民768条)なので、別居中には請求できません。しかし、別居中の相手方名義の財産リストを作成し財産分与に備え、更に、 相手方の収入を把握して養育費協議の準備をすることは大切です。

別居した場合は、別居時に存在した共有財産が分与の対象となります。

1.5年金分割

年金分割も広義の財産分与ですが、このwebでは「年金分割ー離婚後の老後福祉」という独立したページで説明しています。

1.6内縁関係と財産分与

内縁関係・事実婚の解消の場合にも、財産分与は適用されるというのが確立した判例です。

結婚届を出す前に同棲していた場合は、同棲の開始時期から離婚までの期間に対して財産分与が適用されます。

内縁関係には、終生連れ添っても相続法の規定は一切適用されませんが、内縁関係の解消の場合は、財産分与が適用されます。 別れてしまうと内縁でも財産分与が請求できるのに、内縁相手が死亡の場合は、どんなに尽くしていても何も得られないのは、おかしいと批判がつとにある所です。(今回-2019年-の相続法改正でも、一切考慮されていません。)

内縁関係の場合の相続対策は、遺言書で遺贈するしか方法がないでしょう。ただし、相続税法上の配偶者への優遇課税は一切適用ありません。(民事信託の利用もありかと思いますが、省略します。)

1.7相続時の財産分与??間違いです!!

ネットの相談コーナー等を見ると相続時の遺産分割の事を財産分与と誤用している方が相当数います。
法律上、「財産分与」は、離婚時のことだけを言い、被相続人死亡時の遺産を分割することは、「遺産分割」と言います。気をつけて下さい。

2.財産分与と税

財産分与は、離婚時に共有財産を精算する手続にすぎないので、原則、贈与税は課せられません。

分与する側には、譲渡所得税が課せられることがあり、分与される側に、不動産取得税が課せられる場合があります。

2.1贈与税

税法は、財産分与は、「双方が他方の名義で保有する夫婦共有財産を離婚時に精算することに過ぎない」と考えます。従い、 財産分与は精算で贈与ではないという考え方から、離婚時の財産分与には、通常、贈与税は適用されません。 但し、以下のいずれにかに該当する場合は、例外的に、贈与税が適用されます。

  1. 分与額が結婚中の夫婦の協力によって形成された共有財産の額やその他すべての事情(不貞の慰謝料等)を考慮してもなお多過ぎる場合には、多過ぎる部分に贈与税を課税。
  2. 離婚が偽装で、贈与税や相続税逃れと見做される場合は、財産分与額すべてに、贈与税を課税。目的は、強制執行逃れで脱税とは異なりますが、偽装離婚による財産分与であるとして、2019年1月に元タレントの羽賀某の財産分与登記が更正された例もあります。

2.2譲渡所得税

財産分与でも譲渡所得税は課税されます。財産分与する側(=不動産の名義人)にかかる税金で、時価で譲渡(=分与)したと見做されますので、 取得時に比して不動産の時価が値上がりしていた場合は、値上がり額(譲渡益=時価―取得費―譲渡費用)を対象に課税されます。

5年以上所有していた場合(長期譲渡所得)、税率は20%(国税15%、地方税5%)で、マイホームの場合は、3,000万の特別控除の特例があり、取得費が解る場合は、殆どかからないかも知れません。詳細は、国税庁のHPでお調べ下さい。

古い不動産など取得費が不明の場合は、売却額の5%が取得費として見做されて譲渡税額が計算され課税されます。

2.3不動産取得税

財産分与では、不動産を分与される側に課税される可能性があります。
地方税法に規定されている地方税です。離婚を原因とするマンション等の不動産の財産分与を受ける側は、この税の存在を忘れないで下さい。申告も必要な場合もあります。

個人の居住用建物(住居)や宅地の場合に軽減措置があるので、豪邸を除いては大半の場合は課税を免れられるようです。固定資産課税通知や固定資産評価証明で必ず計算して確認すべきでしょう。都道府県乃至政令指定都市のHPに詳細が説明されています。

東京都内にある居住用不動産の場合は、離婚による精算的財産分与の場合だけ、課税対象外となるようです。⇒東京都の措置は条例で規定されていますが、どういう訳か、東京都主税局のHPに記載されていません。別途都税事務所への申告が必須です。

3.財産分与と時効

財産分与を請求するには、離婚後2年以内にする必要があります。もちろん、当事者間で合意すれば、2年を過ぎても可能です。通常は、離婚直前に、離婚協議書や離婚給付等契約公正証書等の書面で取り決めます。

3.1財産分与に時効?

財産分与を請求する期限は、離婚後2年以内です。(正確には、時効ではなく、除斥期間と呼ばれ、離婚後満2年経過すると、時効のように中断もなく、 一切の言い訳は無視され、財産分与は請求できなくなります。)

住居等の移転登記等が2年過ぎて行われる場合もあるでしょう。

離婚2年以内に財産分与の協議が開始し、文書での合意が2年経過後になされた場合でも、登記原因として財産分与としても理論的には問題ありませんが、実務的には、2年以内に協議が開始した旨を証する書面を作成すべきでしょう。離婚後2年を大幅に経過して登記する場合、財産分与として扱われるどうかは難しい問題のように思います。(最終的には税務署に相談して確認して下さい。)

3.2財産分与の協議なしに、離婚後2年に近い場合の処置

財産分与を請求する旨の書面を内容証明で送るか、家庭裁判所への財産分与調停の申立等を考えるべきでしょう。内容証明郵便により、財産分与を請求する意思表示内容と離婚後2年以内であるという送付期日を客観的に証明できます。

家庭裁判所に財産分与の調停又は審判を申し立てることも検討すべきです。別表第二事件なので、調停を申し立てても、成立しない場合でも、必ず審判に移行して決着がつきます。

4.別居と財産分与

別居中は、法的には夫婦ですので、財産分与は請求できません。別居中におけるで財産分与の合意は、離婚直後に有効になります。又、別居によって、夫婦の協力扶助がなくなるので、別居以降共有財産は形成されないとするのが、通説です。

4.1財産分与請求の発生

財産分与請求権は離婚して始めて発生するものです。別居中には、婚姻費用の請求権があるのみで、財産分与の請求できません。又、「財産分与」の調停・審判申立は、離婚後でなければできません。

別居を含む婚姻中は、共有財産の名義人に処分権のある夫婦別産制が適用され、離婚後に、婚姻中には潜在的だった共有財産が顕在化すると見ることもできます。

4.2財産分与の協議・合意時期

財産分与の協議・合意書作成は、離婚届の提出(離婚成立)までに行うのが鉄則です。

離婚後2年間は、法律上は、財産分与請求権がありますが、「離婚」の合意・成立が財産分与条件交渉の決定的な切り札です。離婚が成立してしまうと、財産分与を行う側が、急速に財産分与についての熱意を失うケースを多数経験しています。

離婚届出前に作成した離婚協議書・離婚給付等契約公正証書の財産分与条項は、離婚を停止条件とした合意で、離婚後に当然に有効となります。

4.3財産分与の基準時は別居時

別居時に存在した夫婦共有財産を分与対象とする「別居時基準主義」が、実務上の通説です。離婚時を基準時とすべきという説もありますし、要は当事者が合意したら離婚時を基準時としても全く問題ありません。契約自由の原則です。

「夫婦が同居して互いに協力しているからこそ、夫婦共有財産が形成されるので、別居以降は、協力関係がなくなるので共有財産は形成されない。」という民752条を根拠とする説明がされています。

従い、預貯金は別居時の残高を共有財産として分与対象とし、その後の増減は考慮しないのが原則です。別居時以降に形成された財産は、特有財産とされます。とは言うものの、別居時より預貯金が減少している場合は、「ない袖は振れない」で、実際には、難しい問題があると思います。

住宅ローンも別居時の残高に固定して不動産の純資産額を計算して、家・住居の財産分与額を計算します。

通常は分与対象となる生命保険の解約返戻金も、別居時点での解約返戻金が共有財産となります。

年金分割も広義の財産分与ですが、ここでいう別居時基準主義は適用されず、離婚時基準主義です。年金分割を行う公的主体である年金事務所は、戸籍等に公示されない別居時というあいまいなものは使えないので、戸籍に明示される離婚時が基準となります。

4.4不動産の財産分与登記

離婚後に財産分与が有効になるので、離婚前には、財産分与を登記原因とする不動産移転登記は絶対にできません。
登記権利者と登記義務者との離婚が明記されている戸籍抄本が登記申請時の必須提出書類です。

協議離婚では、登記の共同申請が必要です。不動産の財産分与を受ける側が、「単独で登記手続」ができるよう離婚後直ちに登記手続委任状を財産分与する側から入手できるような書面作成と離婚手続の仕組の構築が必須です。時間が経過すればする程、登記義務者の協力が得られなくなるリスクが増します。

「調停調書」や「判決」がある場合は、委任状がなくても登記権利者が単独申請できるよう法律で規定(不登法63条)されています。

4.5別居中の預金の使い込み・持ち去り

別居前に一方が他方の預金を下ろして持ち去るような事がおきるのはまれではありません。

婚姻費用を超える額については、財産分与の先取り等と見做して離婚時の財産分与の精算問題として処理することが多いようです。

5.共有財産と特有財産の見分け方

名義とは全く無関係に、共有財産か特有財産かが判別されます。夫婦の財産は、「特有財産」「共有財産」「実質的共有財産」に分かれますが、「共有財産」「実質的共有財産」が財産分与の対象です。夫婦の職業収入に関連する資産や、どちらか解らない財産は共有財産です。代表的な特有財産は、婚姻前の預金や相続で取得した資産です。

5.1特有財産・共有財産・実質的共有財産

  1. 特有財産は、財産取得時に他方配偶者の協力がなかった夫婦各自の財産です。財産の対価も実質的に自己のものであることが立証されることが必須で、立証がない限り共有財産とされます。(民762条2項)
  2. 共有財産は、共同生活に必要な家財・家具、夫婦の協力によって取得した双方の名義になっている財産で、名実ともに共有財産となるもの。
  3. 実質的共有財産は、婚姻中に夫婦の協力により取得されたが、名義は夫婦の一方になっている財産です。「婚姻中自己の名で得た財産」は、民法762条1項の文言から特有財産に属するように見えますが、1の特有財産に該当しない限りは、実質的共有財産に分類されて財産分与の対象となります。殆どの夫婦単独名義の家・住居が実質的共有財産です。夫婦の一方が、他方の協力の下に稼働して得た収入で取得した財産は、名義が一方であっても実質的共有財産です。

5.2夫婦の職業収入は共有財産

同居した上で協力して夫婦の共同生活を維持するのは、夫婦それぞれの義務ですし、互いに同居して協力し助け合っているからこそ、夫婦共有財産が形成されるというのが通説の考え方です。(民752条 同居・協力扶助義務)

夫婦は、各自の資産や職業収入に応じて生活費を支出し分担します。(民760条 婚姻費用分担義務)一方しか職業収入がなく他方が無収入の専業主婦(夫)の場合のように、一方のみが世帯収入の100%を分担していたとしても、夫婦は互いの合意や能力などに応じた役割分担をしているだけなので、職業収入などによって形成される共有財産の寄与割合・寄与率が夫婦とも1/2となり、離婚時の共有財産の分与・分割比率は1/2となります。

離婚時の精算的財産分与では、夫の給与は全部が夫のものではなく、妻との関係では、相互に1/2の持分をもつものとして分与されますし、妻のパート収入なども、金額の多寡に関係なく、共有財産を構成して精算の対象となります。

5.3夫婦の職業収入で形成された財産は共有財産

給与等の夫婦の職業収入を原資として形成された財産は、別の形式の共有財産に転化したに過ぎないので、当然に共有財産となります。

双方の職業収入から形成された預貯金・株式等の有価証券や保険料が支出された保険等は、契約名義に拘わらず共有財産となります。

ローンで取得された住居(居住用不動産)や車も、名義が夫100%であっても、職業収入という共有財産から返済されるので、夫婦という当事者間では、共有財産として扱われます。なお、以下式から理解できるようにローン返済は資産形成と同義です。

ローンの返済=マイナス財産(負債・債務)のマイナス・返済=プラスの財産(資産)形成

住宅ローンや自動車ローンが夫の給与口座等から返済されても、夫婦がそれぞれの能力に応じて婚姻費用を分担しているに過ぎないと考えて共有財産から返済されたと考えます。

5.4特有財産

婚姻前の収入で形成された預貯金等の資産や相続等を原因に遺産から取得された預貯金や住居等の資産は、特有財産とされ、財産分与の対象から除外されます。(民762条1項)

特有財産とは言え、双方の合意で分与対象とすることは、当事者間では、何ら問題はありません。但し、共有財産の額や離婚の事情を考慮して、分与額が多すぎる場合は、贈与税の対象となる場合があります。

5.5不明な財産は共有財産

共有財産か特有財産か不明な場合は、共有財産と推定されます。特有財産だと主張する者に立証責任があります。(民762条2項)

学資保険や子ども名義の預金も、殆どの場合、夫婦共有財産でしょう。但し、親権者になる者に、学資保険の名義を切り替えたり、子供名義の預金を管理させる事などは、実務では広く行われています。

5.6居住用不動産の見分け方

結婚後に購入された家・住居等の居住用不動産であれば、殆どの場合、名義に関係なく、夫婦共有財産で財産分与の対象です。購入時に住宅ローンが組まれていれば、ほぼ間違いなく共有財産です。

家・住居は、共有財産の原則に従い、夫婦の持分は各々1/2と推定されますが、頭金等が実家の親から贈与されたとか婚姻前の預金から充当したなど特有財産と認定される場合は、必ずしも、1/2づつの分与比率にはなりません。

夫等が親から相続した住居などは、夫等の「特有財産」とされて、原則的には、財産分与の対象から除外されます。
不動産登記簿謄本等の登記情報を見れば、とりあえず判断できます。登記原因が「売買」であれば、共有財産、登記原因が「相続」だと「特有財産」とそれぞれ、一応の推定できます。 但し、相続で得た資金で住居を購入する場合もあるので、個別の事情をよく調べる必要があります。

尚、夫等の特有財産であるからと言って、別居して婚姻関係が破綻したからという理由で他方当事者が住居の退去や明渡を強制されることはありません。

6.特有財産と共有財産の混合

特有財産が共有財産と混じり合っても、固定資産として現存している限りは、固定資産の評価額を特有財産と共有財産に切り分けて精算します。

預金等の流動資産である合は、協議離婚では、当事者の合意次第です。しかし、裁判実務では、一般的な常識とは異なる扱いになります。

6.1「現存しているか」の基準

「現存しているか否か」が、特有財産として認定され、財産分与対象外とされるための離婚訴訟や財産分与審判等の裁判上の基準です。(昭46.8.25福岡家裁小倉支部審判 家裁月報25巻1号48頁掲載)

ただし、協議離婚する場合は、当事者が合意さえすれば、現存していなくても特有財産とすることができます。

6.2不動産等の固定資産

住居(居住用不動産)購入の頭金や一括・一部期前返済の原資が、婚姻前の預金、相続財産や親の贈与等の特有財産である場合です。

特有財産である流動資産は、不動産(固定資産)に転化しており、不動産が滅失しない限りは、「現存している」ので特有財産として扱われ、住居は、住宅ローン返済から生ずる共有財産と混じり合ったものとして扱われます。

その結果、不動産全体の持分比率は2分の1づつとはなりません。複雑な考え方となりますが、共有財産と特有財産を切り分けて評価されます。

6.3保険契約

婚姻前に契約された保険は、保険料が一括払いでない限り、 婚姻前と婚姻後の期間の比率で特有財産と共有財産に分けるという実務が行われています。(一括払の場合は、特有財産で財産分与の対象外)

6.4預金等の流動資産

婚姻前の預金等に、婚姻後に、入出金が全くなく、手つかずのままである場合、裁判実務上は、「現存している」とされ、特有財産とされます。

例えば、定期預金の場合、1年物定期とした場合、満期日に1年間自動継続されて、他の預金と混じり合っていない場合は、「現存している」とされます。定期預金通帳で、婚姻以降に、あらたな定期預金が設定されても、婚姻前の定期預金は特有財産となります。

婚姻前の預金に、婚姻後の収入や婚姻後の生活費への支出があると、「現存していない」として、共有財産とされます。(民762条2項「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属すると推定する。」)「お金に色はついていない」ので、特有財産と共有財産が混じり合うどちらか解らなくなるので、共有財産と推定されるのです。(水と水を混ぜても、色はつかないで、水のままです。)

しかし、上記の考え方は、あくまで裁判実務上の考え方です。一般の人には全く馴染めないし、納得がいかない人が大半でしょう。

その内容が公序良俗に反しない限り、私的自治・契約自由の原則が貫徹する調停や協議離婚では、婚姻前の預金は、出し入れがあろうとも、特有財産として認め合うことが大半です。当事者が合意さえすれば、何の問題もありません。離婚という修羅場でも、真摯な話合いが解決の基本ですし、そうあるべきです。

7.財産分与額の計算方法―例題つき

生活と関連した負債・債務は、共有の債務と考え、資産から債務を除いた「純資産額」が財産分与の対象額となります。

「純資産額」がマイナスとなるオーバーローンの場合は、通常は、他方に債務の引受をさせない(マイナスの財産分与はしない)で、ゼロを財産分与額の下限とします。

7.1債務も精算の対象

精算的財産分与の基本的な考え方は、実質的共有財産を公平に分配して精算することなので、資産から、資産の取得や生活費の確保に要した債務残高が控除されるのは当然です。

形式的には夫婦の一方名義の債務であっても、実質的に夫婦が共同で負担した認められる債務(住宅ローン等)についても、実質的共有債務として精算の対象となります。

住居等が一方の名義であっても、共有財産とされることの裏返しです。夫婦という当事者関係では、名義ではなく、実質がすべてです。

日常の家事債務―食料等の日常的な購入等から発生する代金債務等―は、連帯債務であることが、民法上規定されています。(民761条。)

7.2純資産が財産分与対象

共有財産である夫と妻名義の資産合計から実質的共有債務合計を差し引いた共有の純資産が財産分与対象となります。

・夫婦共有財産の純資産=夫・妻名義の資産合計―夫・妻名義の負債・債務合計

7.3例題

(万円)

預貯金 900
100
1000
生命保険 100
株式等有価証券 500
退職金相当額 300
家(時価―ローン残) -500
生活費充当カードローン -100
合 計 1300

夫・妻は、各資産がそれぞれ夫名義・妻名義であることを示す。

財産分与対象額

1300万円が、財産分与対象となり、夫と妻が、それぞれ、50%の650万円を取得できるよう以下のような財産分けが行われます。

  1. 分与前における妻の共有財産保有高=100万(現有純資産)ー100万(現有負債)=0
  2. 夫から妻への分与額:1350万円×1/2ー0(現有純資産)=650万
  3. 資産・債務は名義通りのままとする。住宅は夫名義として、離婚後は住宅ローンは夫が返済して、カードローンは妻が返済

財産分与後の夫の保有財産

下記の通り、妻と同額の650万円となります。

【預貯金額】(900万ー650万円:妻への分与)+【生保】100万+【有価証券】500万+【退職金】300万+【家】ー500万=650万

預貯金・生命保険・有価証券・家登記・住宅ローン・カードローンの各名義人に変更はありません。

7.4オーバーローンの場合、マイナスの財産分与はあるか?

夫と妻名義の共有財産と共有債務の合計額がマイナスとなる場合もあります。資産総額を上廻る債務額がある「オーバーローン」、「債務超過」、「純資産額がマイナス」の場合です。上記7.3の例題で、家の価値をー1950万円のオーバーローンになるとします。(他の財産分与対象の数字は同一とします。)

(万円)

預貯金 900
100
1000
生命保険 100
株式等有価証券 500
退職金相当額 300
家(時価―ローン残) -1950
生活費充当カードローン -100
合 計 -150

財産分与対象額はマイナス150万円となります。

前記7.3の例題の解に従うと、妻は、ー150万×1/2ー0(現有純資産)=ー75万となるので、理論上は、妻が住宅ローン残高中、75万を引受けなければならないように見えます。

しかし、住宅ローン等の債権者(銀行等金融機関)の同意がない限りは、上記例で、夫から妻に免責的債務引受(夫が債務弁済を免責され、妻が完全に債務を引き受ける。)をすることができません。この場合、二通りの考え方があります。

考え方A

夫婦間のみで、重畳的債務引受(夫も妻も債務者となるが、債権者は、従来通り、夫に返済を請求する。夫婦間のみで連帯債務とすることと殆ど同一の効果)や履行引受(妻が弁済のみを行う。)を行う。

具体的には、銀行等に対しては、元夫が各月返済し、元妻に、各月75万の元本に対するローン返済相当額を求償するという取り決めをする。しかし、長期間に亘って、債権担保の問題を含め実効性のある取り決めとなるか疑問が多い。

考え方B

財産分与を規定する民法768条3項は、「当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して」財産分与の可否及び内容を定めるとしている。 同条は、婚姻後に積極的に形成された財産(=資産)を念頭においいることは明らかで、積極的な財産形成がない場合は、精算的財産分与を認めず 財産分与額はゼロとする。(ゼロを下限とする)

現時点の裁判実務では、債務超過の場合に、債務の負担を命じることに消極的で、Bの考え方が主流のようです。(「人事訴訟の実務」松原正明編 新日本法規 P339)

裁判外の実務では、Bの考え方に沿って取りきめられるのが通常です。

7.5債務超過でない場合の負債・債務の引受

理論的には、上記考え方Aのように可能ですが、裁判実務では、債務分担・引受を命じることは、考え方Bのように消極的です。裁判所外の実務でも、通常は債務分担や債務引受することはありません。

7.6住宅ローン以外の負債の扱い

カードローン、自動車ローンなどの住宅ローン以外のローン債務もあります。
特に、カードローン残高などを共有の負債と考えるかは実際には難しい問題です。

日常生活費に充当するために借り入れた場合は、 例題のように共有財産として財産分与計算の対象とし、 一方の遊興費やギャンブルのための借入や身内や友人に貸すための借金など共有財産の形成や婚姻生活の維持に無関係な個人的債務は、精算対象にしないということが家庭裁判所の調停実務上の一応の線引きです。境界線ギリギリで灰色のエリアも相当あるようです。

精算対象として、計算式に入れる場合でも、合計がマイナスとなれば、前記と同様に、財産分与額をゼロとすることが通常です。

自動車ローンの残高は、通常の車種を購入したのであれば、当然に精算の対象とすべきでしょう。しかし、ポルシェやフェラーリー等の贅沢な車を購入した場合で、中古車の価値がマイナス(大半の場合、そうなるように思います。)となる場合は、 精算対象とするかは、とても疑問です。

8.ローン購入住居の財産分与額

住宅ローンは住宅取得に直接関連した債務なので、自宅不動産の財産分与評価にあたっては、当然に、不動産の時価から控除されます。不動産の純資産額が分与対象です。

親から贈与された頭金など特有財産が住宅ローン返済で形成される共有財産に併存する場合や別居が関係する場合は、夫婦の分与比率は1/2づつとはなりません。

住宅ローン等債務の引受や分担を求められている場合の問題は、下記をクリックして下さい。

8.1純資産額が財産分与の対象

離婚時のマンション等の住居の時価が、住宅ローン残高を上廻る場合は、上廻る額(=純資産額)が、財産分与対象です。この純資産額を、原則1/2づつ夫婦間で分割することが原則となります。

頭金を婚姻前の預金や実家の親が贈与している場合など特有財産が関係する場合は、複雑で、分与比率・寄与度が1/2づつとはなりません。下記を参照して下さい。

8.2別居による純資産額の変化

4で前述の通り、財産分与の基準時は、通説・判例では別居時点ですので、別居時の純資産額が財産分与対象になります。
別居以降になされたローン返済は、返済者の特有財産となります。

下記例題を参照して下さい。

例題

(万円)

マンション時価(離婚時) 3,000
住宅ローン残高 別居 1,200
離婚 1,000
マンション純資産額 別居 1,800
離婚 2,000

別居時の純資産額1,800万が分与対象。別居中の元本返済額200万は、ローン名義人等のローン返済者の特有財産になると考えるのが通説です。 マンションの時価は、別居時の時価を調べるすべがないので、実務では離婚時の時価を採用します。

9.住居以外の財産分与額

7.3の例題中で、生命保険は解約返戻金、有価証券は離婚時の時価、退職金は自己都合退職金で評価するのが通常です。事情によって解釈が変わってくることは当然です。

9.1預貯金

離婚時の預貯金残高が財産分与対象。

別居が先行する場合は、別居時の預貯金残高とするのが通説・実務です。考え方の詳細は「4.3財産分与の基準時は別居時」を参照して下さい。

9.2生命保険

解約返戻金相当が財産分与対象となります。

学資保険も子を被保険者とする生命保険なので解約返戻金が分与対象です。
保険会社は、個人情報秘匿の原則から、保険契約者以外に絶対に返戻金額を伝えたり、解約返戻金証明書を発行しません。

婚姻前に契約している場合は以下の考え方を参照して下さい。

  • 契約期間:15年
  • 婚姻期間:10年
  • 財産分与対象額:解約返戻金×10/15

9.3株式等有価証券

離婚時・別居時の有価証券残高が分与対象額です。
証券会社から各月は発行される取引残高証明書の金額が分与対象額の証明となります。
譲渡損失額を分与対象額から控除すべきと主張する方もいますが、有価証券の時価が財産分与対象になるので、明らかに間違った主張です。

9.4退職金

定年退職間近(4-5年前)であれば、定年退職金、そうでない場合は、自己都合退職金を分与対象とするのが、 離婚訴訟や調停など裁判所における実務です。

協議離婚では、定年退職が近い場合を除き、退職金が争点とはされないようです。尚、公務員では、自己都合退職金と会社都合退職金の差額が、民間企業と較べて小さいようです。

10.不倫と財産分与

不倫した配偶者であっても、精算的財産分与においては、何ら寄与割合は影響を受けません。2分の1の原則に基づいて実施されます。下記リンクで考え方を参照して下さい。

11.財産分与と調停

離婚後に申し立てる財産分与調停と離婚調停中の財産分与は、内容的には殆ど同じ調停ですが、手続的には、財産分与調停は、合意ができない場合に裁判官による審判に移行して強制的に解決される点に大きな差異があります。

11.1財産分与調停

離婚後2年以内に申し立てれば、養育費と同様、離婚時に協議できなくても、家庭裁判所が関与して、財産分与を単独で協議・決定することができます。
厳密に2年以内の申立てが必須です。1日でも過ぎていたら、受理されません。申立先は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。

話合いがまとまらない場合(=調停が成立しない場合)は、別表第二事件として、調停委員会を構成する裁判官による裁判(審判)に移行し、強制的解決が計られるのが特徴です。裁判といっても、裁判官は調停時点からの事情を熟知しているので、分与すべき財産目録さえあれば、本人のみで十分に対応可能です。恐れずに調停申立てして下さい。

11.2離婚調停と財産分与

財産分与は、養育費と並んで、離婚調停における主要争点です。離婚後に申し立てる財産分与調停と異なり、離婚意思が一致しなかったり、他の離婚条件で合意できず、 離婚調停が不成立になった場合は、自動的に裁判(審判)に移行せず、時間をおいて再度調停を申し立てるか、離婚訴訟を提起して解決せざるを得ません。(離婚訴訟では、附帯処分の一つとして財産分与が判断されます。離婚訴訟は、離婚を認容するかどうかが唯一の争点で、 親権者指定、養育費、財産分与等は附帯・付随する問題という扱いです。<人事訴訟法32条>)

財産分与の条件で離婚調停がまとまらない場合は、財産分与を除いて、離婚を成立させ、財産分与だけ分離して審判対象(訴訟ではなく)とする選択肢もあります。

離婚調停で、財産分与の内容について合意していても、離婚が成立しない限り財産分与請求権が発生しない(民法768条1項、771条)ので、離婚調停における 財産分与だけの合意は、法的には何の意味もありません。

内容的には、財産分与単独の調停と同じく、双方にできるだけ客観的な資料・証拠の提出を要請して、調停委員会が争点を整理し、調整して行きます。 しかし、家事事件は、証拠が乏しいという特徴(←最初から離婚するつもりで結婚する人はいないので)があるので、最終的には、双方に歩み寄りを求める場合が殆どです。

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