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精算的財産分与ー夫婦間協力が終了する別居時を基準とする原則を解説

精算的財産分与額を算出する基準時点として、離婚時(裁判時=口頭弁論終結時)と別居時が考えれますが、実務上の主流・通説は、別居時基準説となっています。

精算的財産分与は、夫婦が婚姻中に同居しながら協力して形成された財産を対象にするもので、別居によって協力関係が終了することから、別居時にある共有財産を対象とすべきという考え方が別居時基準主義です。民法752条に、夫婦の同居協力義務が規定されていることに留意して下さい。

最高裁の判例(最判昭和34-2-19)は、一見裁判時説(=離婚時説)をとっているように見えますが、精算的財産分与と扶養的財産分与を区別せずに、一体で判断したもので、必ずしも、積極的に裁判時説を採用したものでないとするのが近時のコンセンサスのようです。

学説では、扶養的財産分与や慰謝料的財産分与については、現在の資力等を考慮する必要があるので裁判時(=離婚時)を基準とするが、精算的財産分与は、協力関係が終了する別居時基準説が有力と言われているようです。

基準時以降に取得した物件は、離婚前に取得したものであっても、財産分与の対象財産にななりません。取得の原資が、婚姻中に形成された預貯金であっても、取得財産は対象とはなりません。この場合は、取得のために費消した預貯金が、尚現存するものと仮想して財産分与額を決定します。両者の合意の上で、取得した物件の場合は、その物件も対象となるでしょう。(物件の評価額は、原資の預貯金額と同一にはならない場合が殆どなので差異は大きくなる可能性があります。)

しかし、別居時基準主義をとっても、財産分与を規定している民法768条3項は「家庭裁判所は、当時者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与の可否や方法を定める。」(一部文言を簡略化)と規定され、「一切の事情」の中に、別居後の財産変動も考慮要素となるようです。

実務上は、明確性・客観性の観点から、別居時を一応の基準としながら、公平性の観点から、事情に応じて別居から離婚時までの財産変動を考慮することも多いようです。別居時に夫婦の一方が実質的共有財産を費消した場合、別居時の当該財産の評価額(預貯金残高等)が分与対象となるのが原則です。夫等が支払うべき婚姻費用が妻等に支払われず、やむなく預貯金を生活費として費消された時は、別居時の残高ではなく、離婚時の減少した残高を分与対象とすべきでしょう。

参照資料:①「離婚に伴う財産分与ー裁判官の視点に見る分与の実務ー」松本哲泓著(新日本法規出版、2019年8月)②「精算的財産分与に関する実務上の諸問題」山本拓(家裁月報62-3-1)

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