家庭内別居は、同居が継続していて経済的協力関係が実質的になくなったとまで評価できないない場合が多く、家庭内別居が始まった時を基準時としないのが裁判例です。
別居と同居を繰り返している場合は、最後の別居時を基準時としますが、短期間の同居は一時的なものと判断してその前の別居時を基準とする場合が多いようです。
単身赴任や海外赴任中に婚姻関係が破綻した場合は、一方当時者が離婚を申出たときや最後に自宅を出た日等を基準とします。
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家庭内別居
家庭内別居とは、物理的に別居はしていないが、婚姻関係が破綻していることです。しかし、婚姻関係が破綻しているから財産形成に関する協力関係終了したとは言えません。
破綻していたとしても、同居している限りは、経済的にそれぞれが独立しているとは言えないので、家庭内別居の態様によるとも思いますが、多くの場合、協力関係が終了しているとまでは言えず、破綻時(=家庭内別居開始時)を精算的財産分与の基準時にできないようです。(東京家審平22-6-23家裁月報63-2-159)
同居と別居が繰り返される場合
通常は、最後の別居時が精算的財産分与の基準時となる。(広島高岡山支判平16-6-18判時1902-6)
但し、帰宅が一時的なものの場合、その前の別居時を基準とします。一時的なものかどうかは、別居・同居の経緯、同居の期間、合計の別居期間等から判断します。
単身赴任・出稼ぎ・海外赴任と別居
単身赴任等そのものは、同居の態様の一つであり、別居そのものでないので、単身赴任時を精算的財産分与の基準時にはできません。
家計管理のあり方に変更があれば、実質的に経済的協力関係がなくなったと言えますが、明確でない場合が殆どです。
多くの事例では、当時者が離婚を申出た時、当時者が最後に自宅を出た日を基準時とされ、海外赴任の場合に帰国後に同居しなかった場合には、帰国時を基準とする場合が多いようです。
離婚を申出た日以降や最後に自宅を出た出た以降に、財産形成や財産を費消する行為がある場合、離婚の申出日や最後に自宅を出た日を基準とします。当時者が離婚を決意すれば、経済活動や財産形成に変化が現れ出て、経済的協力関係が終了したと考えられるからです。
出稼ぎ中、生活費は家に送金しているが、一度も帰宅しない場合は、離婚が問題となった時点や生活費の送金を止めた時点を基準時になるようです。
参照資料:「離婚に伴う財産分与ー裁判官の視点に見る分与の実務ー」松本哲泓著(新日本法規出版、2019年8月)