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同居期間が短い事は、年金分割の特別事情にあたらない(裁判例)

名古屋高裁平成20年2月1日決定。

厚生年金保険法78条の2第2項は、裁判所は当該対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して年金分割における按分割合を定めることができる旨規定している。

被扶養配偶者の按分割合を定める際、上記一切の事情を考慮するにあたっても、特段の事情がない限り、その按分割合は0.5とされるべき。

単身赴任は、別居とは異なり、特段の事情にあたらないし、相互扶助の欠如等により、夫婦不和となり別居したとしてもその期間は3年弱に止まっていて、特段の事情にあたらない。

夫の借金は、自分名義の借金は当然に返済すべきもので、特別な事情にあたらない。

裁判例出所:家庭裁判月報61巻3号P57

事案の概要

  • 婚姻期間は、昭和54年~平成19年の27年8ヶ月(332ヶ月)
  • 内、単身赴任期間は計2回で155ヶ月と婚姻期間の47%
  • 平成17年~平成19年の31ヶ月夫婦関係が悪化して別居
  • 平成19年7月大阪高裁で和解離婚成立
  • 直ちに、元妻は年金分割についての調停・審判を岐阜家裁に申立て、岐阜家裁平成19年12月17日審判は、0.5の按分割合とした。
  • 元夫は、①短い同居期間、②婚姻期間中の夫の借金、妻の浪費・蓄財、③妻の相互扶助の欠如などの、特別な事情があるとして、名古屋高裁に即時抗告。

高等裁判所の判断

  1. 厚生年金保険法78条の2第2項は、裁判所は当該対象期間における保険料納付に対する当事者の寄与の程度その他一切の事情を考慮して年金分割における按分割合を定めることができる旨規定している。
  2. 厚生年金保険等の被用者年金が、婚姻期間中の保険料納付により、主として夫婦双方の老後の所得保障を同等に形成していくという社会保障的性質及び機能を有していることに鑑みれば、被扶養配偶者の按分割合を定める際、一切の事情を考慮するにあたっても、特段の事情がない限り、その按分割合は0.5とされるべきである。
  3. 単身赴任は、仕事の都合から一緒に生活できないという状態であって、別居とは異なり、特段の事情には該当しない。
  4. 又、夫婦間の相互扶助の欠如などによって夫婦関係が悪化して別居に至ったとしても、本件ではその期間が31ヶ月に止まり、原則的按分割合0.5を変更すべき特段の事情には当らない。
  5. 抗告人(元夫)の借金は、抗告人名義のものである以上、抗告人が負担するのは当然のことであり、元妻が婚姻期間中に浪費・蓄財したことを裏付ける的確な証拠はない。婚姻期間中に抗告人に借金が生じたことだけをもっては、特段の事情には該当しない。
  6. 本件抗告は理由がないから棄却する。

コメント

単身赴任は別居として扱わないのは当然であり、別居期間も3年弱と長くないので、特別な事情が認められないのは当然である。

元夫の借金は、離婚時の財産分与の話合いの中で、元夫が名義通り支払うことにしたものと思われるので、特別な事情に当らないのは当然と言える。(借金問題は、離婚時の財産分与で解決している筈ではないか。)

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