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夫婦の協力で得た収入で取得した一方名義の財産は共有財産(裁判例)

夫婦間における共有財産と特有財産の分類・判定に関しては、民法762条に規定されています。同条1項には、「婚姻中に一方の名で得た財産は特有財産である」と規定されているので、夫名義で購入した有価証券や不動産は、特有財産であるかのように思えます。

しかし、名義が一方だけに属したとしても、取得について他方配偶者の協力がなく、その代金も実質的に自己のものであると立証される特有財産でない限り、実質的な共有財産に分類されて財産分与の対象となります。

ここで紹介する裁判例は、婚姻中に他方の協力を得て勤労して得た収入で取得した一方名義の財産は、実質的な共有財産であることを判示しています。

共有財産かどうかは、財産の名義は全く無関係です。夫婦が協力して勤労・稼働して得た収入から取得した財産は、一方の名義であっても、実質的な共有財産となって財産分与の対象になります。取得について夫婦の具体的協力は必要なく、本来の職業ではなく余暇に行ったアルバイト収入や株式投資等の収益によって取得した財産も共有財産です。従い、大半の預金や不動産、車等が実質的共有財産です。

又、別居時に、一方名義である実質的共有財産を持ち出しても、財産分与の対象である限りは、夫婦双方に管理権があり、違法性はなく不法行為を構成しないとも判示しています。

裁判例出所:家裁月報45-12-102(東京地裁判決平4年8月26日)

事案の概要(東京地判平4.8.26 家裁月報45.12.102)

被告(妻)は、専業主婦であり、原告(夫)との別居にあたり、婚姻中に原告の収入を原資として原告名義で購入して原告の鞄で保管していた国債等の債券類を持ちだした。原告は、持ちだしが不法行為にあたるとして損害賠償を被告に請求した。又、同様に購入した被告名義のゴルフ会員権を原告名義への変更を求めた。本件は、離婚を含む人事訴訟ではなく、不法行為に基づく損害賠償という純粋な民事訴訟として提起されたもの。尚、被告妻は、人事訴訟である離婚請求を提起し、その付帯請求として財産分与を求めていた。

裁判所の判断

民法762条は、婚姻中、一方の名で得た財産は特有財産とされているが、夫婦の一方が婚姻中に他方の協力の下に稼働して得た収入で取得した財産は、名義が一方の財産であっても、実質的に夫婦の共有財産である。

実質的共有財産は、性質上から一方のみが管理するような財産を除いて、婚姻継続中は夫婦共同で管理するのが通常で、婚姻関係が悪化して離婚に至った場合に実質的共有関係を清算するために財産分与が予定されているなどの事実を考慮すると、婚姻関係が悪化して一方が別居する際に夫婦の実質的共有財産の一部を持ちだしたとしても、その持ちだした財産が、将来の財産分与として考えられる対象・範囲を逸脱したり、相手を困惑させるなど不当な目的で持ちだしたなどの事情がない限り、違法性はなく不法行為とはならない。

実質的共有財産であるゴルフ会員権の名義については、財産分与が付帯請求となっている離婚訴訟において、財産分与の中で解決すべきである。

まとめ

  1. 共有財産性の判定に名義は関係ない。
  2. 共有財産か否かのポイントは、婚姻中に他方の協力の下で勤労して得た収入で取得した財産か否かにつきる。
  3. 別居時に、預金や有価証券など実質的夫婦共有財産を持ちだしたとしても、持ちだした財産が、将来の財産分与として考えられる対象・範囲を逸脱したり、相手を困らせる目的がない限りは、違法性はなく不法行為とはならない。
  4. 民法762条1項「婚姻中に一方の名で得た財産は特有財産とする」の規定は、財産取得について他方配偶者の協力がなく、かつその代金も実質的に自己のものであるとの立証がされる限りにおいてだけ、特有財産として扱う規定。立証されない限りは、実質的共有財産とされる。

参照資料:「離婚に伴う財産分与ー裁判官の視点に見る分与の実務ー」松本哲泓著(新日本法規出版、2019年8月)

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