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ローン付住居の妻への分与方法ー住宅ローン処置と名義変更を解説

離婚後も婚姻生活を送っていた家・住居に継続して居住することを妻が希望して、夫に家の財産分与を求める場合はかなり多いように思います。子どもの学校教育との関連や、妻の通勤の関係からそう望むのは自然かと思います。

しかし、夫名義の住宅にローン残債がある場合、妻に家を分与するには難しい問題があります。夫名義の住宅ローンをどう措置するかということと、不動産の名義変更のタイミングをどうするかということが重大な問題になります。

離婚後も夫が住宅ローン債務を引受けて返済を継続する場合は、債権者である銀行等金融機関から夫から妻への名義変更に了解を得られない場合を考慮して、ローン完済後に、夫から妻に名義変更(移転)登記をするとの条項を離婚給付等契約公正証書に定める場合が一般的です。

ローン完済後に名義変更するような場合は、夫が住宅ローンの返済を怠ったときに備えて、妻が夫に代わって第三者弁済することができ、実際に住宅ローンの弁済をしたときは、妻は夫に自己が支払った額を求償できる旨の条項を妻が求める場合もあるようです。妻にとって離婚後に夫がきちんとローンを支払続けるどうかは重大な関心事であるからです。

夫名義の住宅ローンの措置

以下の4つの方法があります。

  1. 夫又は妻がローン残高の期前一括返済する。
    離婚前に期前返済して、金融機関の抵当権を抹消してから、離婚後ただちに、夫から妻に財産分与を原因とする移転登記をします。妻は第三者対抗力のある所有権を確保できます。
  2. 妻が現在の借入金融機関の承諾を得て免責的債務引受(夫に代わって妻がローンの債務引受をして、夫を債務から解放する)をするか、離婚後直ちに他の金融機関から借換え融資を受けて夫名義のローンを一括期前返済して妻が新たな借換えローンの返済を自ら行う。離婚後すぐに移転登記ができます。金利その他の融資条件面では、借換えた方が免責的債務引受より有利となる場合が多いようです。尚、離婚前に銀行等と借換え融資の交渉して口頭での内諾を得ておくことは必須ですが、銀行等は融資を確約した書面はまず出さないようです。
  3. 現在の住宅ローンの名義は変更せず、夫の預金口座から返済するが、実質的返済は毎月夫の返済口座に振り込む等の方法により妻が行う。(夫による形式的債務引受と妻による債務の履行引受)又は、対金融機関に対して、妻が重畳的債務引受を行う。
  4. 現在の住宅ローンの名義は変更せず、実際の返済も夫が行う。(夫による債務引受)

不動産の名義変更のタイミング

金融機関等の事前承諾を得ない抵当不動産の名義変更は、期限の利益喪失事由(残債の一括返済義務が発生)とする約款付きの住宅ローン契約が殆どです。この場合、1,2のように住宅ローンを完済しない限り、離婚後すぐに名義変更して第三者対抗権をもった所有権を得ることはハードルが高いのが実態です。

本来は抵当権者にすぎない銀行等が、ローン残がある限りは譲渡等による所有権の名義変更を認めないのは、名義変更後の新しい所有権者が、抵当権者に対して抵当権の滌除や抵当権消滅請求という強い権利を行使して、ローンの物的保証となっている抵当権が抹消されることを防ぐためです。

従い、住宅ローンの措置が3,4の場合は、離婚給付等契約公正証書にローン完済後に夫から妻に名義変更登記(=財産分与を原因とする所有権移転登記)をするとの条項を定める場合が一般的です。尚、夫が約束に反して第三者に売却してしまうリスクに備えて、財産分与による移転登記の仮登記をします。(仮登記により、移転登記の順位が保全されるので、仮登記のある不動産は、普通の人は購入しません。)

平成15年に民法が改正されて抵当権の滌除制度が廃止され、抵当権消滅請求制度に移行してからは、住宅ローン契約書には、「名義変更は銀行の承諾を必要とするが、(名義変更等の)担保の変更がなされても、担保価値の減少等債権保全に支障を生ずる恐れがない場合は、銀行は変更等を承諾する。」と規定される場合もあるようです。理論的には、財産分与を受ける者が、残ローンについて、少なくとも重畳的な債務引受(夫に加えて妻も連帯債務者になる)をして、ローン完済まで抵当権消滅請求は一切しないし、物件を銀行の了解なく妻・夫以外の第三者に譲渡しない等の誓約書を提出すれば、銀行が名義変更を承諾をする可能性はあるかも知れません。トライして見る価値はあると思います。個々の金融機関により対応が異なることと思います。

夫が住宅ローン返済を怠った場合の措置

ローン返済できる資力はあるのに、ローン返済を怠る人は極めてマレです。金融機関等に対する債務不履行が1回でもあると、信用情報上、直ちにブラックリストに載って、クレジットカードの取り消し等普通の社会生活が送れなくなるからです。

それでも夫が住宅ローンの返済を怠る時に備えて、妻が夫に代わって住宅ローンを返済できるが、妻は夫に対して自己が支払った額を直ちに求償できるとの条項作成を妻が求める場合もあるようです。「求償できる」とするのは、住宅ローン債務は本来的に妻の債務ではなく、元夫の債務に対する第三者による弁済(民474条2項)にすぎないことを明確にするためです。(住宅ローンの措置が4の場合です。)

妻の求償は、通常は事後求償(=自分が第三者弁済してからの求償)ですが、公正証書で事後求償を強制執行できるようにするためには、銀行等の「返済額一覧表」を公正証書に添付して求償額を確定する必要があります。変動金利の場合は、求償額が確定していないため、裁判所は、公正証書があっても債権額が確定していない事を理由に強制執行を認めないようです。公証人からも批判があるようですが—

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