相談者:離婚後1年10ヶ月経過した女性
平成9年(1997年)に結婚して、1年10ヶ月前に協議離婚した専業主婦です。年金分割には合意分割が必要で、元夫は、離婚する時、0.5の分割比率での合意分割すると口で約束していました。年金事務所に一緒に行って年金分割したいと離婚後に何回も連絡しましたが、のらりくらりとかわされゴマかされています。気がつくと、いつの間にか離婚後1年10ヶ月と年金分割の時効2年に近づいてしまってあせっています。どういう風に行動すべきでしょうか?
回答:家族問題専門行政書士
このタイミングでは、元夫婦が自主的に合意しての合意分割の道は完全に放棄すべきです。年金分割の時効期間(正確には除斥期間)である2年間が過ぎると、一切の救済措置はなく、年金分割ができなくなります。管轄の家庭裁判所に、早期に年金分割審判(正式には「請求すべき按分割合審判」)を申立て、強制的な解決手段をとるべきです。
審判申立日が離婚後2年以内である限り、たとえ審判確定日が離婚後2年を経過していた場合でも、審判確定後6ヶ月以内に年金事務所で手続すれば、年金分割ができます。
申立ててからそれ程の時間がかかることなく、ほぼ間違いなく、「按分割合として50%とする」との審判が下り、たとえ相手方が高裁に抗告して不服申立てしても、却下されて審判が確定します。
審判は裁判の一種ですが、年金分割審判は、弁護士に依頼する必要は全くなく、安価なコストで時間のかからない裁判手続です。
まず、審判申立の必須書類である情報通知書を一刻も早く入手するのが、まずすべき事。年金事務所に電話で時効が迫っている事情を話して直接年金事務所に出向けば、短期間で情報通知書が入手できるようです。(通常の手続では、1ヶ月はかかります。)年金事務所に出かける前に、元妻が除籍された元夫の戸籍謄本を取得して下さい。
審判確定後に、年金事務所に出向き、第2号改訂者(元妻)単独で、標準報酬改定請求書を提出して年金分割手続を完了することが必須です。元夫の協力は不要です。審判確定後6ヶ月以内(従来は1ヶ月以内)であれば、手続ができますが、第1号改訂者(元夫)の死亡後1ヶ月以内という期限もあるので、できるだけ早く年金事務所で年金分割手続を行うべきです。
情報通知書取得に必要な書類
- 元夫(夫の氏を称する婚姻をした方)の戸籍謄本で、離婚日が明記され、元妻が除籍されている戸籍謄本。元妻が記載されているので、本人の資格で取得できます。年金分割の対象となる婚姻期間を証明する資料です。
- 年金手帳(基礎年金番号記載頁のコピーで可)
- 情報提供請求書(年金事務所で予約日に入手して記入することでOK)
年金分割審判に必要な資料
- 「請求すべき按分割合審判」申立書3通:1通は相手方に送付されます。
- 情報通知書(離婚後に取得した情報通知書)
- その他「連絡先等の届出書」等各家庭裁判所で求められる書類:すぐに記入できる書類です。
年金分割審判の管轄裁判所
申立人又は相手方の住所地を管轄する家庭裁判所(家事事件手続法233条)なので、申立人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立て方が便利な場合が殆どでしょう。
申立人の住所地が練馬区で、相手方の住所地が国分寺市であった時、申立人の住所を管轄する霞が関にある東京家庭裁判所(本庁)に申立てます。(相手方の住所地を管轄する裁判所は、東京家庭裁判所立川支部です。)
年金分割審判にかかる費用
- 審判申立費用 1,200円
- 審判確定証明書申請費用 250円
- 切手 3,200円分の現物(東京家裁の場合、切手の種類と枚数も指定されている。)
審判確定後の年金事務所での手続
審判書及び審判確定証明書受領後直ちに、年金事務所で、申立人単独で、標準報酬改定請求書を提出して年金分割を実施すべきです。
必要な書類は、①審判書、②審判確定証明書、③本人確認書類(免許証等)④年金手帳、⑥当時者2人の生存を証する資料(元妻が除籍された戸籍謄本、住民票の写し等)⑦標準報酬改定請求書を年金事務所に持参して下さい。⑦は年金事務所で入手して記入することでOK。