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別居時に居宅の明渡請求は認められない場合が大半であることを解説

別居という婚姻が破綻した状況にあっても、離婚により婚姻関係が終了しない限り、夫から妻に対する夫名義の特有財産である住宅の明渡し請求は、通常は認められません。(共有財産の場合は、当然です。)

しかし、妻が婚姻住宅から離れて別居している場合は、共有財産・夫の特有財産に係わらず、妻は現に居住していないので住居の管理権限が認められません。従い、夫の許可を得ないで住居に立ち入るのは、刑法の住居不法侵入罪にあたる可能性があります。夫が鍵を変えて、やむなく別居した場合でも、短期間の別居でない限りは住居不法侵入に該当する可能性もあって、刑法が関係してかなり難しい問題です。

夫婦間の使用貸借契約を前提としても、法的な離婚をしていない限り、使用貸借契約の終了事由(民597条2項)である「借主がその目的に従い使用及び収益を終えた」とは言えませんし、「夫婦の同居義務」(民752条)の趣旨からも、所有者でない妻にも、同居すべき住居の使用権限があるからです。但し、いずれも、別居に至った破綻責任が妻にない限りのことです。

(期間満了等による使用貸借の終了)
民597条
当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

(同居、協力及び扶助の義務)
民752条
夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。

しかし、婚姻生活を送っている住居が、夫の父(舅)や母(姑)所有である場合、夫の別居後に舅・姑が明渡請求をした場合は微妙です。舅・姑には、同居義務はなく、舅・姑との間に使用貸借契約しか認められないからです。

夫と舅・姑間の使用貸借契約は、夫婦と舅・姑間の使用貸借契約であると読み替えることは十分可能です。契約書面がなくても、当時者間の合意の存在は推定できますし、対象物の引き渡しも終えているので、妻と舅との使用貸借契約は十分に認定できると思います。

使用貸借契約の目的についても「婚姻住宅としての使用」という黙示の合意も容易かつ合理的に推認できるので、離婚しない限りは、目的に従った使用収益は終えていないとして使用貸借契約上の住居の使用・占有権原は認められて、明渡請求は否認される可能性は高いように思います。特に、妻とともに学齢期にある未成熟子が同居している場合は、その可能性はより高まり、舅・姑の権利の濫用を認定する場合もあるように思います。

但し、妻が舅・姑に対して、暴力、暴言等を繰り返したような事実があれば、使用貸借契約当事者間の信頼関係は破壊されているとして、使用貸借契約の解除は認められる可能性は高くなると思います。

下記相談事例を参考にして下さい。

Q:夫との別居中に舅所有のマンションからの立退き請求は認められますか?

結婚以来20年、舅所有のマンションに学齢期の子3人も含めて一家5人で居住してきました。夫の不貞を契機に不和となり、夫はマンションを出て、舅と一緒に暮らしています。離婚調停を経て、離婚訴訟を提起されて進行中で、別居後2年程経過しています。離婚訴訟では、双方共、弁護士を代理人に委任しています。

最近、舅からマンションからの明渡請求訴訟が提起されて、困り果てています。近隣の高校、中学、小学校に通学する子どもが3人もおり、マンションから出ていけと言われても、夫の支払う婚費と現在のパート収入だけでは、近所に適当な住居は見つかりそうにもありません。どうすべきでしょうか?

A:舅との使用貸借契約の目的は達していないと主張すべき

明渡訴訟でも離婚訴訟の担当弁護士に代理人を弁護を依頼して、離婚しない限り、使用貸借契約の目的に従った使用収益は終えていないと主張すべきです。

特に、学齢期の未成熟子の教育のためにも現住居に継続して居住することの重要性を訴え、婚費も含めた現下の収入では、近隣での住居確保も困難であることを主張すべきでしょう。

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