相談者:合意分割の公正証書をもつ離婚女性
行政書士に依頼して、離婚前に年金分割条項付の離婚給付契約公正証書を作成しました。離婚届を提出してから、年金事務所で年金分割を請求しようと必要な書類を準備しています。日本年金機構の下記web「合意分割の請求手続」に記載のある「3.請求日前1カ月以内に交付されたお二人の生存を証明できる書類」とは一体何のことを指しているのかチンプンカンプンです。どうしてそのような資料が必要なのかも解りません。お教え下さい。
回答:家族問題専門行政書士
典型的な役人文章で、これを読んだだけでは、何の事を言っているのか解らないのが当たり前です。専門家以外で、これが何のことを指しているか判る方はまずいないでしょう。結論から言うと、年金分割の両当事者(年金の出し手の第1号改訂者と受け手の第2号改訂者)の「戸籍謄本」か「住民票の写し」のことで、その交付日から1ヶ月以内に年金分割の請求をしなさいということを言っているのです。言い換えると、二人の戸籍謄本や住民票を取得してから1ヶ月が経過すると資料不備で年金分割手続は受理されません。新たに戸籍謄本や住民票をとり直す必要があります。
上記は、言い換えれば、元夫等の第1号改定者の死亡後1ヶ月以内に年金分割の請求をしなければいけないということです。離婚後2年以内の請求期間(除斥期間)と同様に、死亡後1ヶ月以内の請求は、合意分割でも3号分割でも共通に求められています。
年金分割という法律行為を法的に表現すると、「元夫等の第1号改定者が、厚生年金保険法に基づいて国に対して保有する債権である終身年金債権の一部を元配偶者等の第2号改定者に譲渡すること」です。終身債権ですから、第1号改訂者の死亡により、当然に債権は消滅するので、もはや、譲渡すべき債権はなくなってしまいます。無からは無しか生まれません。
しかし、厚生年金保険法は、第1号改訂者の死亡後1ヶ月以内であれば、年金分割できる(=債権譲渡できる)との特例を設けました。10月1日に死亡しても、10月1ヶ月間分の年金支給が死後に受けられることと同様な考え方から来ているようです。
尚、元妻等の第2号改訂者改定者の生存を求められるのは、死亡したら当然に債権の被譲渡人としての資格を喪失するからです。第2号改訂者が再婚していた場合、第2号改訂者の死亡後1ヶ月以内に年金分割の請求をすれば、前婚における年金分割は実施され、再婚した配偶者は、遺族年金の受給資格を得ることができます。
「生存を証明できる書類」とは戸籍謄本か住民票の写しを言います。双方の書類とも、当事者が死亡して死亡届を提出すれば、死亡日が記載され、戸籍から除籍され住民票から除票されます。死亡後には、除籍謄本か住民票の除票しかとれません。
第1号改訂者が本籍地を移さなければ、「第2号改定者が離婚を原因として除籍された第1号改訂者の戸籍謄本」が、2.の「婚姻期間等を明らかにすることができる書類」と3.の「第1号改定者の生存を証明する書類」を兼ねますが、請求日1ヶ月以内に交付された謄本が必要です。尚、別途、第2号改訂者の住民票等も必要になります。
しかし、第1号改定者が、離婚後に本籍地を異動している場合はやっかいなことになります。異動前の除籍簿にある「第2号改定者が除籍された第1号改訂者の戸籍謄本」はもはや生存を証明する資料にはなりません。新本籍地の戸籍謄本(抄本)か住民票をとる必要がありますが、他人の戸籍謄本や住民票の取得となるので、簡単には行きません。「権利の行使・義務の履行」を原因とする取得となりますが、詳細はお問合せ下さい。尚、第2号改定者が除籍された戸籍謄本は、現在も有効な戸籍か、除籍簿に入っているかに関わらず、「本人の資格」で当然に取得できます。
年金分割請求に必要な書類
4を除いて、合意分割、3号分割に共通です。
- 年金手帳又は基礎年金番号通知書いずかのコピー(年金手帳は、基礎年金番号が記入されている頁部分のコピー)
- 元妻等第2号改定者が離婚を原因として除籍された元夫等第1号改訂者の戸籍謄本(=婚姻期間等を明らかにすることができる書類。年金分割請求日から6ヶ月以内に交付されたもの。)
- 元妻等第2号改定者の住民票の写し(元夫等第1号改訂者が戸籍を異動している場合は、元夫等の新戸籍謄本か住民票の写し(=両当事者の生存を証明できる書類。請求日前1カ月以内に交付されたもの。)
- ①公正証書②審判書・審判確定書③私署証書のいずれかで、合意分割の按分割合の合意を証する書類
- 標準報酬改定請求書(年金事務所で書式を入手し、記入することでも可)
- 本人確認資料(運転免許証等)