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離婚訴訟ーなぜ汚く、時間と費用のかかるひどい手続になるか?

離婚手続は、夫婦間の話合いと合意が必須要件である協議離婚及び調停離婚と、裁判所が当時者の意思とは無関係に離婚を命令する裁判離婚の2つに分かれます。その他審判離婚等もありますが、マイナーであり知らなくても全く問題ありません。和解離婚は、離婚訴訟における裁判官の和解勧告に従って離婚する手続で、調停離婚と類似した手続です。

離婚調停(正式には「夫婦関係調整調停」)は、両当事者の離婚意思が一致しない限り、離婚が不成立となる点で、基本的には協議離婚と同一原理で運営されています。しかし、家庭裁判所で裁判官と2名の調停委員が構成メンバーとなっている調停委員会で運営されること、調停が不成立となれば離婚訴訟という人事訴訟が提起できる点(調停前置主義)において、離婚訴訟の前哨戦としても捉えられるでしょう。

離婚調停では、公証力をもつ裁判官が離婚の成立を宣言するので、離婚自体は調停成立と同時に成立します。離婚届の提出は、確認的届出に過ぎず、創設的届出である協議離婚の届出とは法的効果が異なります。

訴訟手続は、国家権力が私人間の紛争に公権的に介入し、判決という命令によって紛争を強制解決する手続で、民事訴訟の基本原則である「処分権主義」や「弁論主義」という協議離婚や調停とは全く異なる原理で運営されています。

平成16年(2004年)3月までは、離婚訴訟を含む人事訴訟の一審の管轄が、地方裁判所であったのも、訴訟が調停とは全く異なる原理に基づく手続であることが理由であったと思います。2004年4月から、人事訴訟の一審は、家庭裁判所に移管されましたが、離婚訴訟の本質には一切変更はありません。

離婚訴訟は、調停が前置される三審制の民事訴訟手続であることから、判決の確定まで相当の時間と多大な弁護士費用がかかります。民事訴訟なので、弁護士に依頼しない本人訴訟も可能ですが、専門用語で書かれた訴状や準備書面を読んで反論する準備書面や陳述書を法律の素人が作成することのハードルは非常に高いと思います。(本人訴訟の離婚訴訟を傍聴したことがありますが、裁判官がかなり面倒臭がっていて、本人を叱責しているのを目撃しました。)

民事訴訟手続は、処分権主義と弁論主義が運営の原理原則となっています。人事訴訟では、弁論主義が一部修正されて、職権探知主義が採用されていますが、あくまでも弁論主義が基本です。処分権主義は、当時者が求めない事項については、裁判所は一切判断しないことを言います。弁論主義は、裁判所が、当時者の主張のみに基づいて法適用の基礎となる事実認定(離婚原因の有無を判断する事実認定など)を自由裁量で行うことを言います。この弁論主義から、離婚訴訟は、必然的に、虚実入り乱れた人格攻撃など汚い言葉が飛び交う「一番汚い訴訟」となってしまいます。両当事者及び家族(特に子ども)の精神的疲弊は頂点に達するようです。

時間、費用、精神的疲弊の側面から、離婚訴訟は極力避けて、できれば、協議離婚で決着をつけるべきです。人生の節目である重大事であるからこそ、成熟した大人の知恵をもって冷静にかつ理性的に解決を計るべきです。

徹底的に相手を打ちのめすことが好きな人だけが、離婚訴訟をやればいいでしょう。そういう人は、かなりの少数派のようです。離婚訴訟で徹底的にやりあってしまうと、養育費や面会交流など離婚後も続く元夫婦間の話し合いがうまくいかなるケースも多く見ています。

尚、家事調停は、離婚訴訟とは全く異なる手続ですが、やはり裁判所で行われるので、当時者の申立事項以外は合意調整の対象としなかったり、子どもの利益に関する事以外については、資料提出は厳密に当時者の責任とする等の訴訟に類似した手続思想で進行されていることは否定できないでしょう。

時間と費用

調停前置主義や裁判の三審制により、離婚訴訟の所要時間が長く、民事訴訟の処分権主義からも弁護士を代理人に選任しなければならず、費用も多額とならざるを得ません。

調停前置主義

すべての人事訴訟事件(離婚訴訟が中心ですが、離縁、認知、嫡出否認、親子関係不存在確認等の人事訴訟類型もあり)に調停前置主義が適用されます。

当時者双方が離婚訴訟での決着を望む場合は、1~2回の調停で不成立とされるようですが、通常、調停の終局には半年~1年は必要です。

三審制

訴訟が開始してから半年位後で、担当裁判官による和解勧告が行われるのが殆どです。担当裁判官による単独調停と同じ機能をもち、和解案に合意するか否かは当時者の自由で、合意しない場合は、訴訟が進行して判決に進みます。

一審の判決が出ても、14日間経過しないと判決は確定しません。その間に、相手方は、控訴・上告を行って、高等裁判所・最高裁判所の判断を求めることができます。最高裁は原則として法令審査のみ行い、通常は事実認定を行わないので、大半の民事事件は、2審で判決が確定する場合が多いようです。

訴訟に要する期間間は、最低でも1~2年は覚悟すべきでしょうし、弁護士費用も、調停も含めて、最低でも200万+成功報酬程度は念頭に入れるべきでしょう。

処分権主義

大半の人は、判決で、「面会交流」「養育費」「財産分与」「年金分割」についても、裁判所の判断が下されると誤解していますが、離婚訴訟における判決の主文は、「原告と被告は離婚する」か「原告の請求は棄却する」のみです。

離婚訴訟のキモは、①離婚原因に関する事実認定、②認定事実が法の定める離婚原因に適合するかの裁判官の判断です。「養育費」「財産分与」等については、付帯処分(非訟事項なので請求ではなく処分です)として申立てない限りは、裁判所の判断は下されません。但し、親権者指定だけは、付帯処分申立の有無に拘わらず、裁判所が職権で判断します。

私人間の紛争は、まず。当時者間の話合いにまかせるのが近代法の私的自治の原則です。当時者間で解決できない場合のみに、国家権力が介入して私的紛争を解決するのが裁判制度です。裁判で解決をはかるかどうかは、当事者の意思にまかせるのが処分権主義です。訴訟による紛争の解決は、①当事者によりそれが求められる時にのみ、②要求されている範囲・当時者の申立てた事項においてのみ行うのが民事訴訟の大原則です。

妻が被告となって、予備的反訴を申立てずに、離婚認容の判決が確定した場合に、養育費や財産分与を求める元妻は、訴訟確定後に、別表第二事件の調停として、養育費、財産分与等の調停・審判を家庭裁判所に申立てる必要があります。

離婚請求の棄却を求める妻には、上記以外に、予備的反訴として、養育費、財産分与、年金分割等の付帯所分を求める選択肢があります。「予備的反訴」の「予備的」とは、「原告の請求が認容された場合に備えて求める」の意味です。「反訴」とは、処分権主義から、被告自らが、独自に付帯処分を求めないと裁判所は一切判断しないので、被告が独自に付帯所分を提起したので「反訴」と呼ばれます。

慰謝料請求(損害賠償請求)は、本来は地方裁判所の管轄ですが、離婚訴訟の請求原因事実(離婚原因、不貞等)によって発生する慰謝料については、離婚訴訟と併合して家庭裁判所が一審として審理します。

このような民事訴訟の手続を理解するのは、かなりハードルが高く、書面作成上の困難と相まって、離婚訴訟では、弁護士に依頼する場合が大半のようです。(本人が弁護士であっても、自分の離婚は他の弁護士に依頼するようです。)

一番汚い訴訟

ルールのあるケンカ

民事訴訟は、本質的にルールのあるケンカです。相手に対して攻撃を行うと同時に相手の攻撃に対して有効な防御を行うことによって、裁判官の心証を自分に有利に動かした者が、裁判というケンカに勝ちます。

攻撃・防御という言葉は、民事訴訟法の専門用語そのものだという事実にも注目して下さい。

弁論主義

訴訟というケンカのルールが弁論主義で、訴訟資料(判決の基礎をなす事実の確定に必要な資料)の収集を当事者の責任としています。

私益をめぐる紛争では、当事者が直接に利害を感じているので、当事者の利己心を利用して訴訟資料の提出責任を負わせても必要な資料は充分に収集されるとの考え方がベースとなっています。

仮に、資料収集が不十分な場合でもそれは当事者の自己責任で、当時者のみに主張責任があるというのが大原則です。更に、事実関係が錯綜している民事事件において裁判所が自ら訴訟資料の収集の責任を負うことは実質的に不可能だということからも弁論主義が正当化されてます。

訴訟資料は、準備書面や陳述書という書面で提出されますが、離婚事件の訴訟資料の大半は当時者しか知り得ない事実関係であり、当時者が第一稿を書くか、少なくとも詳細な事情を弁護士し話さない限り、裁判官の心証を左右するような迫力ある書面が作成できないのは当然です。

過去の結婚生活のトラブルの詳細を思い出して書面にすることは、想像以上に辛いことです。更に、相手方が提出する自分への人格攻撃を含む書面も読むことも、とてつもない精神的疲労をもたらすようです。

大半の人が、ウソばかり書いていると相手に憤慨するようです。「1%の真実を膨らませるのが離婚訴訟における書面作成の要諦」と聞いたことがあります。調停委員としての職務上、前件にあたる離婚訴訟の全記録を詳細に読んだ経験からも、「1%の真実云々」とはその通りでないかと思います。攻撃・防御書面を通じて双方のトラウマが更に大きくなることは避けられないことを痛感しました。

通常の神経をもつ人であれば、本人の精神的疲弊は頂点に達すると思います。紛争の当事者である本人の受ける精神的疲弊はやむを得ないとしても、子どもらの家族の受ける心のキズ・トラウマも考慮すると離婚訴訟は極力に避けるべきでしょう。

職権探知主義

人事訴訟法は、裁判所が証拠や訴訟資料の収集を行う職権探知主義を採用すると規定しています。しかし、職権探知主義が適用されるのは、親権者指定や面会交流等の子どもの利益に関する事項についてだけです。具体的には、調査官に調査報告を求めるという方法で限定的に適用されています。人事訴訟も、民事訴訟の一部で、弁論主義が原則で、一部で例外的に、職権探知主義が限定的に適用されると考えるべきでしょう。

財産分与等で、銀行等に対する預金残高の嘱託調査も可能ですが、認めるか否かは、あくまで裁判官の裁量で、実際には限定的にしか認められないようです。

裁判オタクが傍聴

不貞が離婚原因となっている離婚訴訟で、証人尋問がある時には、下半身の問題に興味をもついわゆる「裁判オタク」の傍聴が増えるようです。何故、オタクの間で、情報が流布されるのか全く解りません。でも、性犯罪事件のようにオタクが集まる可能性もあり、結果的に、心ならずもサラシモノにされてしまうリスクも覚悟すべきです。

家事調停の進行ルール

調停は訴訟とは全く異なる手続ですが、司法手続の一貫として裁判所で行われるので、どうしても、民事訴訟法原則がその進行に反映される場合が多いと思います。

家事事件手続法には、進行原理についての規定は殆どないのですが、裁判官なり書記官が弁論主義的運営に慣れているので、結果としてそうなるように思います。

調停委員会の嘱託調査権なども一応法定されていますが、実際には抜かずの宝刀でしょう。親権者指定や面会交流など子の問題で揉める時には、調査官よる調査が実施される場合もあり、職権探知主義的進行もある程度行われています。もちろん、当時者は調査官の調査結果(「調査官の意見」という形式で結論が出されます)には法的には拘束されませ んが、実質的には、拘束されるようです。

処分権主義的進行

当時者が申立てない事項は調停の対象としない。  但し、当初の申立書内容には拘束されず、調停中に口頭等で明示的に当事者から申立てられた事項に関しては、調停対象とします。当時者は、書面又は口頭で申したてない事項は、調停の対象とはしないのが原則です。

調停委員は、当時者が新事件を申立てるよう誘導しないのが原則。当事者が請求したい事を述べた時は、新しい申立ができますと言うに留めているようです。

しかし、年金分割などに基本的事項に当時者が無知の場合は、調停委員から本人が気付くように助け船を出すこともあると思いますが、調停委員により対応が異なるようです。

弁論主義的進行

財産分与で、どこに財産があるか解らない(これが意外と夫に多い)という当事者に、調停委員は、「自分で調べなさい。」としか言わないのは、弁論主義的進行の例でしょう。

当事者提出の証拠類や述べた事項に基づいて、調停を進行させるのですが、どうしても不公平になる場合は、裁判官を交えた調停委員会の評議を行います。裁判官、調停委員毎に、対応は異なります。

調停の弁論主義的進行は、調停委員会は、当時者間の問題に抑制的にしか介入しないと言い換えていいと思います。

但し、子どもに関する事項については、調査官調査を行って職権主義的な進行も行われています。しかし、すべての子どもの問題に調査官調査が行われる訳ではありません。事案の内容次第です。


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