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裁判で、不倫相手から離婚慰謝料を請求する場合は、特別な事情が必要

第三者が、配偶者の一方と不貞行為を行った場合、他方配偶者は、第三者に対して、不倫の事実を知ってから 不法行為の時効期間 である2年以内に提訴して、肉体関係や性交等の外形的事実を立証すれば、不倫慰謝料を請求することができます。

一方、不倫の事実を知ってから2年以上経過してしまっている場合、不倫慰謝料は請求できなくなりますが、不倫行為を原因として離婚に至っていた場合は、第三者に離婚慰謝料を請求することは理論的に可能です。

最高裁平成31年2月19日判決は、不倫相手の第三者に対して離婚慰謝料を賠償させる要件について厳しく判断して、第三者が、夫婦間の婚姻関係に不当に干渉して離婚をやむなくさせた特別の事情がある場合でない限り、離婚慰謝料を請求できないと判示しました。

不倫慰謝料・離婚原因慰謝料は、離婚の原因となった不倫行為その他の行為により精神的苦痛を被ったことによる慰謝料であり、離婚慰謝料・破綻慰謝料は、離婚をするにやむなきに至ったことにより被った精神的苦痛による慰謝料で、侵害された権利・保護法益等の観点から、下表の通り分類されます。

不倫慰謝料の類型 第三者から侵害された権利(保護法益) 最高裁判例

離婚原因慰謝料
不倫・不貞慰謝料
破綻原因慰謝料

・婚姻共同生活上の夫又は妻としての地位に結びつく人格権・人格的利益ないし名誉。

・他方の配偶者の夫又は妻としての権利。

・貞操維持請求権(守操義務)

昭和54年3月30日判決

平成8年6月26日判決

離婚慰謝料
破綻慰謝料

・婚姻関係ないし婚姻生活の平穏・平和の維持。

・婚姻共同生活を維持するか、離婚をして解消するかの自己決定権

平成31年2月19日判決(本件)

事案の概要

  • 平成6年(1994年)3月,婚姻。同年に長男、平成7年に長女出生。
  • 元夫(原告)は,婚姻後,妻らと同居していたが,仕事のため帰宅しないことが多かった。
  • 平成20年12月 元妻が就職して、A社に入社。それ以降、夫婦は性交渉がない状態。
  • 平成21年6月以降 A社の同僚として知り合った男性(被告)は、元妻と不貞関係に。
  • 平成22年5月頃 元夫は,男性と元妻の不貞関係を知ったが、元妻は,その頃に男性との不貞関係を解消し,元夫との同居を継続。
  • 平成26年4月頃 元妻は、長女の大学進学を機に,元夫と別居。
  • 平成26年11月頃 元夫は、横浜家庭裁判所川崎支部に、元妻を相手方として、夫婦関係調整調停を申立て、平成27年2月5日、調停成立して調停離婚。
  • 平成27年11月9日元夫は、男性を相手に、離婚慰謝料の請求訴訟を提起。

裁判所の判断

第一審及び原審の東京高裁は、元夫の請求の一部を認容した。その判断は下記の通り。

  • 男性と元妻との不貞行為の事実が元夫に発覚したことを契機に元夫婦の婚姻関係が悪化し、離婚に至ったのであるから,男性の不貞行為は、元夫の夫としての権利を違法に侵害したので、両者を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負い,元夫は、男性に対して,離婚に伴う慰謝料を請求することができる。

これに対して、最高裁は、「夫婦間では、他方の有責行為により離婚をやむなくされた精神的苦痛に対する慰謝料を求めることができるが、本件は、夫婦間ではなく、不貞関係にあった第三者に対して、離婚に伴う慰謝料を請求するもの」として、不貞相手の第三者に対して、離婚に伴う慰謝料(離婚慰謝料)を請求する場合は、夫婦間での請求より、その要件はより厳格であるべきとの下記判断を示して、原審を破棄して、元夫の請求を棄却した。

  1. 夫婦が離婚するに至るまでの経緯は当該夫婦の諸事情に応じて一様ではないが,協議上の離婚と裁判上の離婚のいずれであっても,離婚による婚姻の解消は,本来,当該夫婦の間で決められるべき事柄である。
  2. したがって,夫婦の一方と不貞行為に及んだ第三者は,これにより当該夫婦の婚姻関係が破綻して離婚するに至ったとしても,当該夫婦の他方に対し,不貞行為を理由とする不法行為責任を負うべき場合があることはともかくとして,直ちに,当該夫婦を離婚させたことを理由とする不法行為責任を負うことはない。
  3. 第三者がそのことを理由とする不法行為責任を負うのは,当該第三者が,単に夫婦の一方との間で不貞行為に及ぶにとどまらず,当該夫婦を離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情があるときに限られるというべきである。
  4. 従い、夫婦の一方は,他方と不貞行為に及んだ第三者に対して,上記特段の事情がない限り,離婚に伴う慰謝料を請求することはできない。
  5. 本件についてみると,男性は、元妻と不貞行為に及んだものであるが,これが発覚した頃には、元妻との不貞関係は解消されており,離婚成立までの間に上記特段の事情があったことはうかがわれない。したがって,元夫は,男性に対し,離婚に伴う慰謝料を請求することができない。

コメント

不倫行為に起因する慰謝料の性格は下記の通り、①離婚原因慰謝料・不貞慰謝料②離婚慰謝料(離婚に伴う慰謝料)・破綻慰謝料の二種に分類される。

離婚原因慰謝料・不貞慰謝料は、離婚の原因となった不貞行為その他の行為により精神的苦痛を被ったことによる慰謝料であり、離婚慰謝料・破綻慰謝料は、離婚をするにやむなきに至ったことにより被った精神的苦痛による慰謝料である。

配偶者に対する離婚慰謝料の請求が問題となる場面では、広義の離婚慰謝料に属するものとして一括して捉えられ、離婚に対する財産分与とは別に請求することができる。(但し、財産分与の中で考慮されていれば、別途の請求はできない。)

不貞慰謝料・離婚原因慰謝料としての性格をもつ慰謝料の請求権の消滅時効は、元夫が不貞行為の事実を認識した時である平成22年5月頃から進行し、本件訴訟が提起された平成27年11月9日の時点では消滅している。

離婚慰謝料の性格をもつ慰謝料の請求権の消滅時効は、元夫と元妻の離婚成立日である平成27年2月25日から起算されるので、訴訟提起日には、慰謝料請求権は時効消滅していなかったことになる。

従い、元夫の慰謝料の主張は、元夫と元妻の婚姻関係が破壊され、離婚をやむなくされたことにより被った精神的苦痛についての離婚慰謝料を求めていると裁判所は判断して、不貞慰謝料ではなく離婚慰謝料の認容の可否について裁判所は判断している。

離婚による婚姻の解消は,本来,夫婦の間で自主的に決められるべき事柄であるのに、それに不当に干渉して離婚をやむなくさせた特別の事情がある場合、不貞相手の第三者は、離婚慰謝料を賠償すべきであるとして、その特別の事情の要件について下記の通り示した。

不貞相手の第三者が、単に不貞行為に及んだというだけでは足らず、離婚させることを意図してその婚姻関係に対する不当な干渉をするなどして当該夫婦を離婚のやむなきに至らしめたものと評価すべき特段の事情がない限り、離婚慰謝料を請求できない。

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